コンフォーカル顕微鏡
回折限界のスポット光で物体を照明し、そこからの反射光/蛍光/透過光を検出器前に配置したピンホールに導くことで顕微鏡が生まれ変わります。この様な顕微鏡はコンフォーカル顕微鏡(あるいは共焦点顕微鏡)という名で知られています。コンフォーカル顕微鏡を使えば、分解能とコントラストの高い画像を得られるだけでなく、物体の奥行情報を知ることができます。工業分野では表面形状測定に使われたり、生物分野では細胞組織の三次元構造を明らかにすることに使われたりします。コンフォーカル顕微鏡は物体の一点一点を光スポットで走査しますから、走査系の設計が非常に重要です。
広視野顕微鏡
顕微鏡を広視野化(低倍率化)することは高倍率化よりもずっと難しいのです。単に視野を広げるだけであれば低倍率の対物レンズを使えば良い、と考えがちですが、低倍率の対物レンズはNA(開口数)が小さく、そのままでは顕微鏡としての性能が低下してしまいます。フォブでは、大きなNAでしかも視野の広い対物レンズを開発するところから始めます。またこの様な広視野・高NA対物レンズは走査系への負担が高く、バランスのとれた設計にはノウハウが必要です。良く設計された広視野顕微鏡は、まさにthe art of microscopyです。
2光子顕微鏡
1つの蛍光分子に、光子が同時に2つ吸収されると、あたかも光子一つ一つの持つエネルギーが2倍になった様な挙動を示します。この現象を利用したのが2光子顕微鏡です。2光子顕微鏡では生体に吸収の少ない赤外光を励起光として使えますから、生体深部の観察が可能になります。また2光子吸収は非線形現象ですから、ピンホールを使わなくとも物体の3次元情報を得ることができます。そのためNDD(non descan detector)を使えば更に生体深部まで観察可能になります。2光子顕微鏡以外にも、SHG(第2高調波)顕微鏡やSFG(和周波)顕微鏡等々の非線形顕微鏡があり、いずれも新分野の開拓が期待されています。
OBIC顕微鏡
半導体素子に光を照射すると内部光電効果によって電荷(キャリア)が発生します。光走査顕微鏡でこれを画像化するのがOBIC(optical beam induced curent)顕微鏡です。つまりOBJC顕微鏡では信号源が光センサではなく、物体に接続された電流アンプです。半導体内部に励起された光キャリアは空乏層電界によって捕獲されることによって外部に電流として取り出されますから、OBIC顕微鏡では光キャリアの発生効率と空乏層電界の両方を知ることができます。OBIC顕微鏡は半導体産業で不良解析や開発研究によく用いられます。OBIC顕微鏡は、ハードウエアに多少の変更を加えることで、内部光電効果ではなく全く別の光効果を画像化することも可能です。
TCSPC顕微鏡
蛍光物質を励起すると光を発します。パルス光で励起すると蛍光もパルスになります。蛍光パルスが消滅する迄の時間は蛍光寿命と呼ばれ、蛍光物質によって異なる値を示します。したがって蛍光寿命を計れば蛍光物質を識別する手掛かりにできます。蛍光寿命は一般的にピコ秒~ナノ秒オーダーなので通常の電子回路では正確な計測は難しいのですが、時間相関単一光子計数法(TCSPS法)であれば可能になります。波長ではなく時間で分光しますから、場合によっては、蛍光分光用色フィルタを省略できたり、多波長励起が不要になる等、数多くのメリットが生じます。
サーモリフレクタンス顕微鏡
金属の反射率には僅かに温度異存性があります。従って、反射率を精密に計測することで金属表面の温度変化を知ることができます。この技術はThermo refrectance法として知られており、この原理を応用したのがサーモリフレクタンス顕微鏡です。サーモリフレクタンス顕微鏡では反射光を検出しますから、走査、非走査を問わず反射型の顕微鏡構成です。一方、温度変化に対する入力には、試料そのものが動作することであったり、他の熱源で加熱することもあります。他の熱源とは加熱炉やレーザー光等です。後者の場合は、読み出し光と同じ側から入力するだけでなく、裏側から入力することも行われています。
強磁場環境下顕微鏡
数T(テスラ)以上の強磁場環境下での顕微鏡観察にはノウハウが必要です。磁性体部品は徹底して排除しなければソレノイドに吸引されてしまいますし、可動部分は例えそれが磁性体ではなくとも、金属部品であれば渦電流による磁場拘束をうけます。簡単なモニタ用途には強磁場中で動作するカメラを使用することが可能です。さらに物体の三次元情報が必要な場合には、コンフォーカルスキャンヘッドを潜望鏡の様なリレー光学系でマグネットから十分遠ざけることで、高いコントラストや三次元分解能を保ったまま物体観察が可能になります。リレー光学系の設計を工夫すれば、重力と磁場を平行あるいは垂直に、設定で切り替え観察することができます。
高放射線環境下顕微鏡
強い放射線環境の実験室(ホットラボ)での顕微鏡観察は困難です。オペレーターが危険ですから肉眼での観察は考えられませんし、光センサも放射線の影響を強く受けてしまいます。そこでリレー光学系を使用して、放射線シールドの外から観察する必要が出てきます。このとき、通常の顕微鏡光学系を使用するとリレー光学系に起因する不要散乱光・迷光が観察に悪影響を及ぼし、コントラストの低い画像になりがちです。ここでコンフォーカル光学系を用いれば、例え何段リレーしようとも、高いコントラストを失うこと無く、物体の三次元情報を得ることが可能になります。
高温観察顕微鏡
物体の温度が高温になり、自発光するようになると顕微鏡観察は難しくなります。まず、物体からの輻射熱で対物レンズなどの部品が破損しやすくなります。しかし、それだけではなく、本質的に高温観察では物体のコントラストが失われてしまうのです。というのは、顕微鏡で得られるコントラストは物体の反射率であったり、物体の形状による反射光の強弱に起因しているからです。高温物体で、照明光よりも輻射光が強くなれば、コントラストは反射率や形状ではなく、放射率の差が主となってきます。従って均質な材料であれば、ほぼコントラストは0になってしまいます。レーザー顕微鏡を用いて照明光の弁別比を上げれば、高いコントストを保ったまま高温物体を観察可能です。
ヘテロダイン顕微鏡
僅かに振動数の異なる二つのレーザー光を干渉させると、振動数の差に応じた唸り(ヘテロダインビート)が発生します。二つの光を参照光と信号光として、参照光の光路を固定しておけば、信号光の光路が受ける位相変位がそのままヘテロダインビートの位相に反映されます。ヘテロダインビートの周波数を電子回路で読み取り可能な領域に設定すれば、光の位相差を電気で読み出せるため、高速かつ高精度の干渉計が製作できます。参照光と信号光のペアを発生させるには、レーザーのゼーマン効果、AO素子やEO素子、機械的な移相器等様々な方式が提案されています。
シュリーレンカメラ
シュリーレン法は、流体の流れや、透明固体の屈折率分布を可視化できる装置として知られています。高輝度光源からの光を一旦平行光にし、物体は平行光路に置きます。平行光は再びレンズによって集束され、空間に光源の像を作ります。この光源の像をナイフエッジ等で遮った後、再度結像させます。S光源が遮られているので視野は暗黒になる筈ですが、物体の屈折率分布によって屈折した光だけはナイフエッジによって遮られることなく、明るいコントラストとなって結像します。この作用で屈折率の不均一な部分が強調され、独特の画像を生じます。最近では高輝度光源やナイフエッジを用いないでシュリーレン画像を得る方法(BSO法)が開発されるなど、古くて新しい観察法です。
KTN高速焦点調節機構
KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)結晶は、EO(電気光学)効果が非常に大きい材料です。EO素子としてよく知られたLiNbO3などと比較して100倍前後ものEO効果があります。この特長を利用してレーザービームの偏向器が開発され、高速スキャナーへの期待が集まっています。また電極構造を工夫することでレンズとしての応用も可能であり、従来の機械式可変焦点レンズと比べて、1000倍の高速動作が実現されています。KTN可変焦点レンズは顕微鏡だけでなく、様々な焦点位置決めに応用可能です。
レーザー光路精密切替機構
1台のレーザーを2種類の実験装置で共有したい、という要望は少なからず存在します。通常こういった用途にはフリップミラーが用いられます。しかし、フリップミラーには反射側の光軸が安定しないという欠点があり、精密な光学系を反射側に配置するには問題がありました。精密なクロスローラーガイドを使用すれば、この不確かさを2桁程度改善することができます。さらに、特許出願中のデバイダを用いれば、光路を0-100%で切り替えるだけでなく、任意の比率で分配することも可能です。こうすれば、2種類の実験装置を同時に使用することができます。